『太平記』巻三十九に伝える説話

2015年01月04日 10:21

「神功皇后攻新羅給事(しらぎをせめたまうこと)」
神功皇后は三韓出兵の際に諸神を招いたが、海底に住む阿度部の磯良だけは、やってこない。そこで神々が音楽をかなで、歌を歌うと磯良も感動のあまり神遊の庭にやってきた。体中に巻き貝やカキなどついていて醜いのでそれを恥じて現れなかったという。磯良は龍宮城に使いとして派遣され潮を操る霊力を持つ干珠・満珠を借り受けて皇后に献上し、これを武具として出征することになる。この時皇后の胎内には八幡大菩薩が宿っていた。諏訪・住吉大明神を副将軍として高麗国へ攻め寄せる。干珠を海に投じると水が引き、高麗軍が好機として舟から下りて戦おうとするところへ、満珠を投じると潮が十方から押し寄せてみな溺れてしまった。かくして高麗はわが朝に従うこととなった。

東之神社に祭られる三柱の神々、神功皇后の胎内で出征したという応神天皇、住吉神、磯良神の関係する説話として興味深いものがあります。本社に祭られる諏訪明神も「副将軍」として登場するのは偶然の一致?。

南北朝の戦乱の時代、世の中が乱れ、倭寇が跋扈して元帝の抗議を受けても、取り締まることができない。ここで、語り手は蒙古来襲と神功皇后の事績を回想し。神意に支持されたこれらの事例と倭寇の略奪行為は性格が異なり、日本滅亡の兆しではないかと怖れる…というストーリーの一部です。

*余談*
タイトルが「攻新羅給事」なのに本文で神功皇后が攻めていく先は「高麗」になっています。高麗は日本の南北朝時代、朝鮮半島にあった国(王朝)で、神話の時代には存在しません。そのへんも太平記はいい加減です。この話を大陸進出の正当性に利用した明治の人たちも「日本滅亡の兆しでは?」という作者の危惧は完全に黙殺。こちらもまたいい加減な話です。

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